裁判例解説 算定表により算定される婚姻費用の額に、住居費と習い事費用を収入比で按分した分担額を加えて算定した例

算定表により算定される婚姻費用の額に、住居費と習い事費用を収入比で按分した分担額を加えて算定した例

 

こんにちは!

かがりび綜合法律事務所代表弁護士の野条です。

本日の裁判例は、

算定表により算定される婚姻費用の額に、住居費と習い事費用を収入比で按分した分担額を加えて算定した例

です。

 

◆婚姻費用以外に習い事や住居費用がある場合には、その分求められるのかということが問題となります。

 

◆本件においては、相手方には、申立人の住居費につき、標準算定方式で考慮されている額を超える部分につき収入比で按分して分担すべき義務があると定めるのが公平にかなうというべきである

 

◆習い事は、通常の学校教育とは別に任意に行うものであるから、原則として、子の監護者がその責任と負担において行うべきものであるが、義務者がその習い事をさせることについて従前同意していた場合などには、適切な範囲で義務者に負担させるのが相当である

 

としています。

簡単ながらコメントしますが、まず習い事ですが、本来婚姻費用に含めれているものだといぇすが、元々お互いが合意していた場合には合理的な範囲で婚姻費用とは別途負担してもらうこととした妥当な判断だと思います。

次に、住宅についてもその当事者の生活に応じて公平の理念に基づいた判断をしたものだとおもいます。

 

 


東京家裁2019(平成31)年1月11日決定
[事実の概要]
夫の不貞に気づいた妻が夫婦関係の修復を求めていたところ、夫は突然一家で住んでいた社宅を出て、妻に対し立ち退きを求めた。このため妻は子ら(小学2年と1年)とともに転居した。妻から夫に対して婚姻費用を請求した。
[決定の概要]
住居費については、「算定表により相手方(夫)が分担すべき婚姻費用を算定すると月26万円となる。(中略)基本的には相手方の一連の行為によってやむを得ずに転居したものであると認められる。近隣の住居を借りたのも、夫婦の問題には関係のない、子らの生活環境の変化を最小限にしようとするものであって合理性があり、その広さや賃料額も、従前の生活や親子3人の一般的な生活水準に比して不相当に広く、高額であるということもできないのであり、これらを考慮すると、本件においては、相手方には、申立人の住居費につき、標準算定方式で考慮されている額を超える部分につき収入比で按分して分担すべき義務があると定めるのが公平にかなうというべきである。標準算定方式において年収200万円未満の世帯の標準的な住居費(特別経費の一部)として考慮されているのは2万7940円であるから、相手方は、申立人の実質賃料月額10万0625円のうち上記金額を超える7万2685円について、双方の収入比(相手方:申立人=1404万円:93万円≒14:1)に応じて分担すべきであり、6万7839円を分担させるのが相当である。」とした。
習い事費用については、「習い事は、通常の学校教育とは別に任意に行うものであるから、原則として、子の監護者がその責任と負担において行うべきものであるが、義務者がその習い事をさせることについて従前同意していた場合などには、適切な範囲で義務者に負担させるのが相当である。」とし、本件では、夫も同居中習い事に賛成し費用負担をしていたことを認めた上、スイミングとピアノの習い事費用のうち15分の14の額を夫が負担すべきとした。
上記の住居費及び習い事費用の夫の分担額を、算定表により算定される額に加算した。

 

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