こんにちは!
かがりび綜合法律事務所代表弁護士の野条です。
婚姻費用分担義務は、婚姻関係が破綻した後はなくなるのか?という問題です。
考え方としては、「婚姻費用分担義務は本来婚姻継続のための夫婦の協力扶助義務と共通の基盤に立つものであるから、その原因の如何にかかわらず、夫婦間にこのような基本的協同関係を欠くに至り将来 回復の見込もないときは、夫婦の協同関係の稀薄化に伴ないある程度分担責任も影響を受ける」といい、学説にも夫婦の「協同関係の稀薄 化」が婚姻費用分担義務を減額させるとの見解もあります。
しかしながら、婚姻費用分担義務は、婚姻という法律関係から生じ るもので、夫婦の円満な関係、協力関係の存在という事実状態から生じるものではないとおもいます。したがって、婚姻関係が破綻しているから、ある いは円満な関係が回復する見込みがないからといって夫婦の扶助義務が消滅するわけではありません。
このように心配しなくてもよいのですが、裁判例の中にはこのような主張を取り入れようとする考え方もなくはないのです。このため、こちらも理論武装して闘っていく必要があります!
以下裁判例をあげておきます。お困りの方はかがりび綜合法律事務所までご相談ください!
【裁判例8】 前橋家審平4・11・19家月45・12・84
昭和50年10月婚姻し、一児をもうけた夫婦で、医師である相手方(夫) が昭和53年9月に栃木県の病院に単身赴任して以来別居となっていたと ころ、夫が昭和62年1月以降生活費を送金しなくなったことから、申立人 (妻)が婚姻費用の分担を求めた事例である。審判は「法律上の婚姻関 係が継続している以上、婚姻関係が破綻しているからといって、そのこ とだけで、一方が他方の婚姻費用を負担することを要しないとはいえな いが、本件のように、婚姻後約3年間同居しただけで以後十数年にわたり 別居して、婚姻関係は回復不可能な状態に立ちいたった場合には、その 状態になったことについて、婚姻費用を分担する側の当事者にもっぱら 責任があるときは格別、そうでなければ、婚姻費用の分担に当たって、 社会的に見て相当と認められるだけの婚姻費用を分担している限り、常 に必ずしも自己とまったく同一の生活を保持するに足りるだけの婚姻費 用を分担しなければならないものではない。」とし、従前の分担額等を考 慮して平成4年4月以降については月額35万円としたが、その額は、審判 が参考のために労研方式によって算定した額46万余円より約10万円低い 額である。
【裁判例9】 岡山家玉島出張所審平4・9・21家月45・11・54
昭和56年6月婚姻し、その後、約1年別居し、同居に至ったものの、昭 和60年秋から再度別居した夫婦において、申立人(妻)が子の監護費用 を含む婚姻費用分担を申し立てた。相手方(夫)には、入退院を繰り返 したという事実がある。審判は、「申立人と相手方は昭和56年6月1日の 婚姻以降現在まで約11年間の内、わずかに3年半の同居しかなく、しかも ここ7年間別居のままで、その間、相手方は重い病気にかかり、入退院を 繰り返しているにもかかわらず、かつ、相手方が同居を求めたのに申立 人がこれを拒否し、相手方は一般に申立人から妻としての協力を全く受 けておらず、最も切実に妻の助力を要した時期にもなおこれを受けてい ない。既に夫婦間は回復しがたいまでに破綻している」