☆裁判例の解説です!相手方の不貞行為を認定した上で、相手方の抗告人に対する婚姻費用分担請求につき、信義則あるいは権利濫用の見地から、子の養育費相当分に限って認められるとした事例

 

◆相手方の不貞行為を認定した上で、相手方の抗告人に対する婚姻費用分担請求につき、信義則あるいは権利濫用の見地から、子の養育費相当分に限って認められるとした事例

 

こんにちは!

かがりび綜合法律事務所代表弁護士の野条です!

本日は、

相 手方の不貞行為を認定した上で、相手方の抗告人に対する婚姻費用分担請求につき、信義則あるいは権利濫用の見地から、子の養育費相当分に限って認められるとした事例

の解説をいたします。

 

相手方が不貞行為に及んだにもかかわらず、その相手方が婚姻費用請求してきた場合、その相手方に婚姻費用を全額支払う必要があるのでしょうか。こちらからすると踏んだり蹴ったりになる上、自分勝手な主張ではないかと思うこともあるのではないでしょうか。

 

そこで、[大阪高裁2016(平成28)年3月17日決定 判時2321号36頁]があります。

この裁判例では、婚姻費用分担請求は、信義則あるいは権利濫用の見地から、子らの養育費相当分に限って認められると判断したものです。この裁判例の考え方は、各家庭裁判所でも使われていると思います。お子さんは不貞したわけではないですので養育費相当分に限っては支払うということになります。

 

実務でも使われることが多いのでご参考にしてください!

 

 


[大阪高裁2016(平成28)年3月17日決定 判時2321号36頁]
[事実の概要]
X(妻)とY(夫)は、一時別居していたが(1度目の別居)、同居を再開した。しかし、その後、XとYとの間で離婚の話が持ち上がり、Xは3人の子を連れて再びYと別居した(2度目の別居)。XはYに対し婚姻費用の分担を求める調停を申し立てたが、不成立となり、審判手続に移行した。Yは、別居の原因は、専らYの不貞によるものであって、Yによる婚姻費用分担金の請求は権利濫用に当たると主張した。原審は、XがYと1度目の別居をしていた時期に、男性Aと交際していたことを窺わせる事情は認められるが、Xが従前からうつ病と診断され、精神的に不安定な状況にあったことと、その後、XとYが再度同居していることなどの諸事情に照らして、1度目の別居をしていた時期において、Yに不貞があったとしても、Xの請求が権利濫用に当たるとまで評価することはできないとした。また、XとYが再度同居した後、Xと別の男性B(長女の習い事の先生)とのソーシャルネットワークサービス上の通信において、一定程度、相互に親近感をいだいていることを窺わせる内容のものがあることが認められるが、このことをもって、XとBが不貞関係にあったとまでみることはできないとして、婚姻費用の支払いを命じた。これに対し、Yが即時抗告した。
[決定の概要]
本決定は、Xと男性Aとの関係については、原審とほぼ同じ理由により、不貞関係があったからといって、直ちにXの婚姻費用分担請求が信義に反しあるいは権利濫用に当たると評価することはできないとした。しかし、Xと男性Bとの関係については、ソーシャルネットワークサービスを使い、単なる友人あるいは長女の習い事の先生との間の会話とは到底思われないやりとりをするような関係であると認定し、これによれば不貞行為は十分推認されるから、XのYに対する婚姻費用分担請求は、信義則あるいは権利濫用の見地から、子らの養育費相当分に限って認められると判断して、原審判を変更した。