裁判例解説、婚姻費用の支払いと全体の解決を見据えて

 

こんにちは!

 

かがりび綜合法律事務所代表弁護士の野条です。

 

申立人及び相手方 は、共に将来夫婦共同生活を回復維持する意思が全くなく、その婚姻共 同生活は完全に破綻していると認められるから、本来相手方が負担すべき分担額のうち、申立人の生活費に関する部分の5割は、その限度で減少されるべきとした裁判例を紹介しながら婚姻費用の支払について考えてみたいと思います!

 

◆裁判例のご紹介

◆長崎家審昭54・6・4家月32・3・108
相手方(夫)の他女との交際が原因で離婚した夫婦が約2年後の昭和51 年に再婚(復縁)したが、相手方が、離婚中に他女との交際を深め、再 婚に当たってその関係を清算していなかったことが原因で、夫婦間にト ラブルが絶えず、その結果、昭和53年8月、相手方が家出して別居となった。審判は「婚姻費用分担義務は夫婦の婚姻共同生活を維持する上で必要な費用を分担することを目的とするものであるから、その 具体的な分担義務は婚姻共同生活の破綻の程度に応じて軽減されること があり得るものと解すべきである」(要旨)として、「申立人及び相手方 は、共に将来夫婦共同生活を回復維持する意思が全くなく、その婚姻共同生活は完全に破綻していると認められるから、本来相手方が負担すべき分担額のうち、申立人の生活費に関する部分の5割は、その限度で減少されるべき」とした。

◆婚姻費用の支払いと全体の解決を見据えて

この裁判例では、申立人及び相手方 は、共に将来夫婦共同生活を回復維持する意思が全くなく、その婚姻共同生活は完全に破綻していると認められるから、本来相手方が負担すべき分担額のうち、申立人の生活費に関する部分の5割は、その限度で減少されるべきとしています。

しかしながら、この裁判例は限定的に考えられるべきで、野条としては否定的な見解です。というのも、民法上は信義則に反する形、例えば有責配偶者である場合は除いて、婚姻費用は支払われることが妥当だと考えるからです。これは民法上やこれまでの裁判例からしても、婚姻費用は重要なものだと考えるからです。

 

ただ、破綻主義を前提にしたときに、いつまでも婚姻費用を支払って離婚が認められないとするのも本来は不合理であるとも考えています。すなわち、有責配偶者側からも相当程度の責任を果たすのであれば離婚が認められてもよいでしょうし、破綻であるのに夫婦を続ける実質的な意味があるのか、これはあくまで私見です。逆に言えば、有責配偶者から離婚を求められている場合にはよりよい条件を導いて、よりよい形で解決することが良い、そういうことでもあります。

 

お困りのかたはかがりび綜合法律事務所までご相談ください!


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